子どもの自己肯定感を高めるには?親の関わり方や声かけ例を紹介
近年、子どもの非認知能力の育成に注目が集まっています。非認知能力とは、IQテストや学業成績のように点数では測れない力のことです。例えば、目標達成のために粘り強く努力したり、困難に直面しても諦めずに挑戦したりする力などが含まれます。その中でも自己肯定感は、子どもが健やかに成長していく上で土台となる重要な要素です。
子どもの自己肯定感を高めることは、子どもの将来の可能性を広げることにつながります。このコラムでは、子どもの自己肯定感を高めるための具体的な方法について、親の関わり方や声かけの例などを交えながら解説します。ぜひ最後まで読んで、今日から実践してみてください。
自己肯定感とは
自己肯定感とは、簡単に言うと「自分のことを好きである」という感情です。ありのままの自分を認め、価値があると思える感覚のことです。
「自分は大切な存在だ」「自分にはできる」といった、自分に対する肯定的な気持ちを持つことで、困難に立ち向かう力や、新しいことに挑戦する意欲が湧いてきます。自己肯定感は、子どもの健やかな成長に欠かせない要素です。
子どもの自己肯定感を引き下げる言葉とは?
自己肯定感を育む上で、言葉選びは非常に重要です。何気なく使っている言葉が、子どもの心を深く傷つけ、自己肯定感を下げてしまう可能性があるため注意しましょう。
特に注意したいのは、子どもの存在や能力、価値観を否定する言葉です。「そんなこともできないの?」といった能力を否定する言葉は、子どもに無能感を抱かせ、自信を失ってしまう原因になります。
「そんなの当たり前でしょ」といった価値観を否定する言葉も、子どもの個性を尊重せず、思考を狭めてしまう可能性があります。そして、絶対に言ってはいけないのは「あなたはダメな子ね」といった存在そのものを否定する言葉です。
その他にも、子どもを悪者扱いする言葉、ほかの子と比較する言葉、外見や性別に関する言葉、恐怖心を煽る言葉なども、子どもの自己肯定感を下げる可能性があります。親がイライラして感情的に叱ることも避けましょう。
肯定的な言葉がけを心がけ、子どもが安心して自分らしくいられる環境を作ることで、自己肯定感を育むことができます。
絶対NG!3つの呪いの言葉
親が何気なく子どもにかけている言葉が、子どもの自己肯定感を大きく下げてしまうことがあります。特に以下の3つの言葉は禁物です。
言葉 | 理由 |
早くしなさい | 子どもと大人では時間の感覚が違います。子どもは目の前のことに集中するため、急かされても理解できません。 |
ちゃんとしなさい | 「ちゃんと」という言葉は抽象的なので、子どもには何をどうすればいいのか具体的に伝わりません。 |
勉強しなさい | 命令形で子どもに勉強を強制すると、自主性を損ない、学ぶことへの意欲を低下させます。親が子どもを下に見ている印象を与えてしまう可能性もあります。 |
これらの言葉の代わりに、子どもの気持ちに寄り添った声かけを意識しましょう。例えば、「早くしなさい」ではなく「あと5分で出発だよ。準備できたかな?」と具体的に伝える、「ちゃんとしなさい」ではなく「おもちゃを片付けたら、絵本を読もうね」と行動を促す、「勉強しなさい」ではなく「一緒に宿題を見てみようか」と誘いかけるなど、工夫してみましょう。
自己肯定感が低い子どもの特徴
自己肯定感が低い子どもには、行動面、精神面、対人関係において、いくつかの特徴が現れやすい傾向があります。これらの特徴は、持って生まれた性格によるものではなく、周囲の環境や大人からの影響によって形成される場合が少なくありません。
本項目では、自己肯定感が低い子どもの特徴について詳しく見ていきましょう。
行動面の特徴
自己肯定感が低い子どもは、行動面にもさまざまな特徴が見られます。
例えば、発言が少なくなる傾向があることが挙げられます。授業中に先生に質問されたり、友達に話しかけられたりしても、自信がなく、うまく返答できないため、発言することを避けてしまうのです。
また、新しいことに挑戦することを怖がったり、失敗を極度に恐れたりする様子が見られます。そのため、何事にも消極的で、周囲に促されてもなかなか行動に移せないことがあります。
さらに、物事に集中できないことも、自己肯定感が低い子どもに見られる特徴です。自分に自信が持てないため、何をするにも集中力を欠いてしまいます。これらの行動面の特徴は、自己肯定感の低さを示すサインと言えるでしょう。
精神面の特徴
精神面では、自分に自信がなく、常に不安や緊張を抱えている傾向があります。些細なミスや失敗を過度に責め、自分を否定的に捉えてしまうことも少なくありません。そのため、物事をネガティブに考えやすく、「どうせ自分にはできない」といった思い込みに囚われやすい状態です。
常に不安や緊張を抱えているため、精神的に疲弊しやすく、情緒が不安定になることもあります。これらの精神的な特徴は、日常生活や学習面にも影響を及ぼす可能性があります。
対人関係の特徴
対人関係では、他人と比較して劣等感を抱いたり、周囲の評価を気にしすぎる傾向があります。そのため、集団の中で孤立しやすく、輪に入れない、遊びに参加できないといった様子が見られることもあります。また、過度に他人に依存したり、反対に攻撃的な態度をとってしまう場合もあるようです。
これらの特徴は、自己肯定感の低さからくるサインかもしれません。早いうちに気づき、適切な対応をすることが重要です。
子どもの自己肯定感を高めるには
子どもの自己肯定感を高めるには、さまざまな方法があります。
- 安心できる居場所を作る
- 子どもの気持ちに寄り添って安心させる
- 適切な挑戦の機会を与える
- 成功体験を日記に書く
- 規則正しい生活習慣を送る
- 親自身の自己肯定感を高める
- ほかの子どもと比較しない
- 自然体験の機会を増やす
- 日常生活のなかで役割を与える
- 肯定的な声かけをする
以上の方法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
安心できる居場所を作る
子どもにとって、安心できる居場所を持つことは自己肯定感を育む上で非常に大切です。安心して過ごせる場所こそが、子どもが自分自身を受け入れ、ありのままの自分を表現できる土台となるからです。
家庭は本来、子どもにとって最も安心できる居場所であるべきです。そのためには、親子間の良好なコミュニケーションを心がけ、子どもが安心して何でも話せるような雰囲気づくりが重要になります。子どもの話にしっかりと耳を傾け、共感的に受け止めることで、安心感を育みましょう。
子どもの気持ちに寄り添って安心させる
子どもが何か話したいことがあるそぶりを見せたら、まずはじっくり話を聞いてあげましょう。このとき、すぐに解決策を提示したり、頭ごなしに否定したりせず、子どもの気持ちに寄り添うことが大切です。
話を聴く際には、相槌を打ったり、子どもの目を見て頷いたりするなど、聴く姿勢も大切です。真剣に話を聞いていることを伝えることで、子どもは安心して自分の気持ちを話すことができます。
そして、話し終えた後には「話してくれてありがとうね」と一言添えてあげましょう。この言葉は、子どもに安心感を与えるだけでなく、自己肯定感を高めることにもつながります。「自分の気持ちを話しても大丈夫なんだ」という安心感は、子どもが自己表現をする上で非常に重要です。話すことで気持ちが整理され、落ち着きを取り戻すきっかけにもなります。
適切な挑戦の機会を与える
子どもの自己肯定感を高めるためには、適切な挑戦の機会を与え、成功体験を積ませることが重要です。
挑戦には、必ず成功が伴うとは限りません。ときには失敗してしまうこともあるでしょう。しかし、失敗したとしても、挑戦した事実そのものを認めてあげることが大切です。失敗から学び、次につなげる力もまた、自己肯定感を育む上で重要です。
「よく頑張ったね」「挑戦したことがすごいよ」など、努力や挑戦そのものを褒める声かけを意識しましょう。結果だけでなく過程を評価することで、子どもは挑戦することへの意欲を維持し、自己肯定感を高めていくことができます。
成功体験を日記に書く
成功体験を日記に書き留めることも有効です。日記をつける習慣は、1日の出来事を振り返り、良かったことや感謝の気持ちなど、ポジティブな感情に目を向ける機会を与えてくれます。特に、成功体験を日記に書く際には、そのときの状況や感情を詳細に記録することで、成功を再度味わうことができ、自己肯定感をより一層高める効果が期待できます。
規則正しい生活習慣を送る
早寝早起きは生活リズムを整える上でとても効果的です。早寝早起きや規則正しい生活リズムの維持、バランスの取れた食事、適度な運動を行うことは、脳の機能を最適化し、自己肯定感の向上につながります。
しかし、親が「早く寝なさい」「早く起きなさい」と命令するだけでは、子どもの自己肯定感は育ちません。
大切なのは、子ども自身が起きる時間を決めたり、朝やるべきことを自分で計画したりする機会を与えることです。たとえすべてが完璧にできなくても、できたことや努力を褒めることで、自信を育むことができます。
忙しい朝は親もついイライラしがちですが、規則正しい生活習慣を身につけるためには、子どもの主体性を尊重し、そのルールや順番をサポートする姿勢が重要です。こうした関わりが、子どもの自己肯定感を育む大きな要素となります。
親自身の自己肯定感を高める
子どもの自己肯定感を高めるには、親自身の自己肯定感を高めることが重要です。
子どもは親の行動をよく観察しています。親が自分を大切にしていなければ、子どもも自分を大切にする方法を学べません。親自身の自己肯定感を高めるには、以下を心がけましょう。
- 自分を受け入れる:長所だけでなく短所も認め、ありのままの自分を受け入れる。
- 小さな喜びに感謝する:日常の中でポジティブな面を見つける習慣を持つ。
- 好きなことを楽しむ:趣味や好きな活動でリフレッシュする。
- 新しいことに挑戦する:目標達成や新しいスキルの習得で自信をつける。
親が自分を大切にする姿を見せることで、子どもは自然と自己肯定感を育みます。親が笑顔で前向きに過ごすことは、子どもにとって最高のお手本です。
ほかの子どもと比較しない
ついついやってしまいがちなのが、ほかの子どもと比較することです。特に、兄弟姉妹間や親戚、近所の子どもと比較してしまうケースが多いのではないでしょうか。
「〇〇ちゃんはもうひらがな全部書けるのに、どうしてあなたはまだ書けないの?」、「お兄ちゃんはもっと小さい頃には自転車に乗れたのに……」など、比較する言葉は子どもの自己肯定感を大きく下げてしまいます。
比較された子どもは、親の期待に応えようと頑張る子もいれば、諦めてしまう子もいます。前者の場合は、常にプレッシャーを感じながら生活することになり、精神的な負担が大きくなってしまいます。後者の場合は、何事にもやる気を失い、無気力になってしまうでしょう。
子どもはそれぞれ個性があり、得意不得意も違います。ほかの子どもと比較するのではなく、子どもの良いところに目を向け、褒めてあげましょう。
「〇〇ちゃんは、絵を描くのが上手だね」「〇〇くんは、走るのが速いね」など、具体的な言葉で褒めてあげることで、子どもは自分の長所に気づき、自信を持つことができます。
自然体験の機会を増やす
自然体験は、子どもの自己肯定感を高める効果的な方法の一つです。自然の中は予想外の出来事が多く、子どもにとって未知の状況に対応する力を養う場となります。子どもは自然体験でさまざまな発見や挑戦を通して、達成感や自信を獲得することができるでしょう。
文部科学白書2016に発表されている調査結果では、自然体験が豊富な子どもほど、自己肯定感や道徳観・正義感が高い傾向という結果が出ていました。
自然体験には、以下のようなメリットがあります。
- 五感を刺激し、感性を豊かにする。
- 好奇心や探究心を育む。
- 問題解決能力や創造性を高める。
- ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらす。
- 集団行動を通して、協調性やコミュニケーション能力を育む。
自然体験の機会を増やすためには、近所の公園で遊ぶのはもちろん、山や川で遊んだり、キャンプをしたりするのがおすすめです。
これらの活動を通して、子どもは自然の素晴らしさを体感してさまざまな学びを得ることができ、親子のコミュニケーションを深める機会にもなります。ぜひ、積極的に自然体験を取り入れて、子どもの健やかな成長をサポートしましょう。
参考:文部科学白書
日常生活のなかで役割を与える
文部科学省のデータによると、子どもの自己肯定感を高めるためには、子どもにも役割を与えることが重要になると示されています。
役割を与えることで、子どもは「自分は役に立つ存在だ」と感じ、責任感や達成感を育むことができます。また、家族の一員として貢献しているという実感を持つことで、自己肯定感が高まりやすくなります。
4〜5歳なら、花に水をやる、テーブルを拭く。6〜7歳なら、簡単な料理を手伝う、ペットの世話をするなど、年齢や発達段階に応じて、子どもにできる役割を与えましょう。無理なく続けられることが大切です。
役割を与えたときは、できたことを具体的に褒めてあげましょう。「ありがとう」「助かったよ」などの言葉をかけることで、子どものやる気を高めることができます。
参考:資料3-2 自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子どもを育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上|文部科学省
肯定的な声かけをする
子どもの自己肯定感を育むには、親の肯定的な声かけが欠かせません。
些細なことでも、行動や努力を具体的に褒めることが大切です。例えば、おもちゃを片付けたら「きれいに片付けてくれて助かったよ、ありがとう」、絵を描いたら「この色使い、とても素敵だね!どんな気持ちで描いたの?」といった声かけをしてみましょう。こうした言葉は、子どもが自分の行動を認めてもらえたと感じるきっかけになり、自己肯定感を高めます。
また、他者への言動について褒めるのも効果的です。例えば、友達に優しく接したときには「〇〇ちゃんに優しくできて偉いね。きっと喜んでるよ」と伝えましょう。親の肯定的な声かけが、子どもの人間関係を良好にし、周囲に対する肯定的な姿勢を育てる助けになります。毎日の生活で積極的に肯定的な声かけを心がけましょう。
子どもの自己肯定感を高める深コミュワードとは
子どもの自己肯定感を高めるためには、日常会話の中でプラスの言葉を増やし、子どもの心にポジティブな影響を与える「深コミュワード」を使いましょう。
本項目では、子どもの自己肯定感を高めるために効果的な言葉として、非認知能力ドリル「親子の対話で深めるコミュ力」 で紹介している「深コミュワード」を紹介します。
次の言葉を引き出す言葉
「どうしてだと思う?」「何のためかな?」「なぜそう考えたの?」 |
自分の関心を伝えて、子どもの話を掘り下げて聞くことができるワードです。
子どもの話を遮らないよう注意して、このようなワードを使ってタイミングよく質問してあげましょう。
対話の意欲を生む言葉
「聞きたい!聞かせて!」「そうなんだね!」「よく分かったよ!」(上手な言葉を褒める) |
対話の始まりと終わりにこのようなワードを使うことで、対話の意欲を生むことができます。
引っ込み思案の子どもには、こちらから「話を聞かせて」とお願いし、話ができたことをしっかりと褒めて意欲を育てましょう。
応答が止まった時の対話
「今、何を聞いたかわかる?」「どこか分からないところがある?」「何か考えていることはある?」 |
子どもの応答が止まってしまったときは、このようなワードで子どもの気持ちを整理してあげましょう。
大事なのは「正解」を出すことではなく、対話を通じて「一緒に考える」ことです。分からないことは相談すれば良いんだ、と子どもが自然に思える対話環境を意識しましょう。
新しい学び・探究心につなげる言葉
「他にもっと良い方法はあるかな?」「自分ならどうする?」「これも試してみようか?」 |
学んだことを共有できたら、このようなワードでその次のステップに意識を向けるのもおすすめです。大人が、新しい学びへの最初の一歩の手助けをしてあげましょう。
繊細な質問・世の疑問に対して一緒に考える言葉
「私もどちらが良いか分からない」「私はこう考える」「考えたことがなかった」「何でそれが気になったの?」「何か考えていること、思ったことはある?」 |
子どもは経験が少ないため、デリケートなテーマについても気軽に質問することがあります。大人はその問いそのものを否定したり、安易にからかったりするのは避け、このようなワードで疑問に対して一緒に考えましょう。
このような言葉は、子どもに「対話が楽しい」という実感を与えることができます。このような気持ちは、子どもには何よりのモチベーションとなり、自己肯定感の向上にもつながるでしょう。
自己肯定感を高めるには親子のコミュニケーションが重要
子どもの自己肯定感を育むためには、親子のコミュニケーションが鍵となります。
親が「話を聞いているつもり」でも、実は一方通行になっていることがよくあります。例えば、子どもが「学校で友達と遊んだよ」と話した際に、「そうなんだ、よかったね」で終わらせていませんか?それでは子どもの気持ちを十分に引き出すことができません。
大切なのは、子どもの話を真剣に聞き、さらに子どもの気持ちや考えを深堀するような質問をすることが重要です。「どんな遊びをしたの?」「誰と遊んだの?」「そのときどんな気持ちだった?」といった質問を投げかけることで、子どもは自分の気持ちを整理し、伝える力を身につけます。
親が適切な質問をし、子どもの話に共感しながら深い対話を続けることで、子どもは「自分の話を大切にしてもらえている」と感じます。このような体験が、自己肯定感を育む土台となるのです。
非認知能力ドリルで親子の対話を始めよう
自己肯定感を育むには、親子間の良好なコミュニケーションが重要です。しかし、忙しい毎日の中で子どもとしっかり向き合う時間を作るのは簡単ではありません。そのような状況で役立つのが、「深コミュ力」を育む非認知能力ドリルです。このドリルでは、親子が深いコミュニケーションをとることで、子どもの非認知能力を伸ばすことを目的とし、それを「深コミュ力」と位置づけています。
1日わずか10分ほどの取り組みで、次のような効果が期待できます。
- 子どもが自分の気持ちや考えを表現する力を高める
- 親が子どもの本音や気持ちを理解し、寄り添うスキルを身につける
- 親子の信頼関係を深める
このドリルを活用して、親子の対話を深めながら、豊かなコミュニケーションを楽しみつつ、お子さんの成長をサポートしてみてはいかがでしょうか?
非認知能力ドリル「親子の対話で深めるコミュ力」は、オンライン・書店でご購入いただけます。1日10分間の深コミュ力時間(タイム)を、親子で始めましょう!